2026年5月29日、在留資格の変更・更新や永住許可の手数料の上限を引き上げる改正入管法が成立し、6月5日に公布されました(令和8年法律第32号)。さらに7月3日、出入国在留管理庁は具体的な金額と2026年10月1日の施行日を盛り込んだ政令案の意見公募を開始しています。外国人材を複数名雇用している企業にとっては、年度後半の支出が確実に増える話です。本記事では、政令案の金額、企業のコストへの影響、そして9月末までにやっておくべきことを整理します。
「法律」「政令案」「施行日」を分けて理解する
今回の制度変更は3つの層に分かれており、混同すると社内説明を誤ります。
- 法律(成立・公布済み):手数料の法定上限を定めました。在留資格変更許可・在留期間更新許可が各10万円、永住許可が30万円です。上限であって、実際に支払う額ではありません。
- 政令(意見公募中):実際に支払う額と施行日を定めます。2026年7月3日に案が公表され、施行日を2026年10月1日とする内容になっています。
- 施行期限:手数料に関する改正規定は、2027年3月31日までの政令で定める日に施行されると法律上定められています。10月1日は、この幅の中で提案されている日付です。
つまり、法律が成立したから直ちに新料金になるわけではなく、最終的な金額と施行日は政令の公布を待つ必要があります。ただし10月施行を前提に検討が進んでいることは事実であり、予算と従業員への説明には織り込んでおくべき段階です。
政令案の手数料一覧
| 手続き・決定される在留期間 | 現行 窓口/オンライン | 政令案 窓口 | 政令案 オンライン |
|---|---|---|---|
| 変更・更新(1年) | 6,000円/5,500円 | 33,000円 | 27,000円 |
| 変更・更新(3年以上5年未満) | 6,000円/5,500円 | 64,000円 | 56,000円 |
| 変更・更新(5年以上) | 6,000円/5,500円 | 75,000円 | 65,000円 |
| 永住許可 | 10,000円 | 200,000円 | ― |
ここで重要な点が2つあります。
第一に、窓口申請とオンライン申請で金額に差があることです。1年の更新で6,000円、5年以上で10,000円の差が出ます。人数がまとまる企業ほど、オンライン申請の体制を整える価値が大きくなります。
第二に、表の区分は「決定される在留期間」によるものであり、申請すれば長い期間が付与されるという意味ではありません。実際に決定される在留期間は個別の審査によります。長期間の決定を前提に費用を約束したり、逆に最も安い区分だけで予算を組んだりするのは避けるべきです。
企業のコストはどれだけ増えるか
具体的に計算してみます。特定技能外国人を10名雇用し、いずれも1年ごとの更新、窓口申請という前提です。
- 現行:6,000円 × 10名 = 年間6万円
- 政令案(窓口):33,000円 × 10名 = 年間33万円(+27万円)
- 政令案(オンライン):27,000円 × 10名 = 年間27万円(+21万円)
10名規模で年間20万円超の増加です。50名規模であれば年間135万円前後まで膨らみます。さらに、技能実習から特定技能への移行、特定技能から技術・人文知識・国際業務への変更といった節目でも変更許可手数料が発生します。法定手数料に加えて、行政書士報酬・翻訳費用・各種証明書の取得費用も別途かかるため、総額で見積もることが必要です。
9月末までに申請すべきか
施行日が2026年10月1日で確定した場合、9月中に受け付けられた申請には現行の手数料が適用されると考えられます。在留期限が10月〜12月に到来する従業員について、更新申請は在留期限の3か月前から可能ですので、前倒しできる案件があるかを確認する価値はあります。
ただし、無理な前倒しには注意が必要です。更新申請では直近の課税・納税証明書や雇用状況が審査されるため、書類がそろわない段階で急いで申請すると、かえって追加資料の求めや不許可のリスクを招きます。「安く済ませる」ことより「確実に許可を得る」ことを優先すべき場面もあります。
減額・免除の対象になるのは誰か
改正法では、経済的困難その他特別の理由がある方について手数料を減額・免除できる制度が設けられます。入管庁が7月3日に公表したガイドライン案によれば、対象となるのは「生活保護法の要保護者に準ずる程度に生活に困窮していると認められる者」であり、かつ「人道上の配慮をする必要がある者」の双方に該当する場合とされています。
具体的には、難民・補完的保護対象者の認定を受けた方、人身取引等の被害者、指定難病の患者や重度障害児を養育する方などが類型として挙げられています。一般的な就労系の在留資格で働く外国人材は、この減額制度の対象にはなりません。企業として「減額があるかもしれない」と期待して予算を組むのは適切ではありません。
費用負担は会社か本人か — 先に決めておく
手数料は許可を受ける本人が納付する建前ですが、実務上は企業が負担しているケースも少なくありません。金額が10倍前後に上がることで、この曖昧さが表面化します。
雇用契約書、就業規則、特定技能の1号特定技能外国人支援計画、社内の費用精算ルールを照合し、更新・変更・永住申請のどこまでを誰が負担するのかを、本人が理解できる言葉で明示しておくべきです。一律に会社負担とする必要はありませんが、入社時の説明と更新時の運用が食い違えば、予期しない負担をめぐる不信につながります。本人負担とする場合も、賃金からの控除を当然視せず、支払方法をあらかじめ確認しておきましょう。
JESTAとは別の話
同じ改正法ではJESTA(電子渡航認証制度)も創設されました。これは査証免除で来日する外国人に渡航前の電子認証を求める制度で、施行日は2029年3月31日までの政令で定める日と、今回の手数料改正とは時期も対象も異なります。在留資格認定証明書で就労目的で来日する方の採用手続きと混同しないよう注意してください。
企業が今やるべき4つのこと
1. 更新台帳を作り、10月以降の案件を切り分ける
従業員ごとに在留期限・申請予定月・申請方法(窓口/オンライン)を一覧化し、9月末までに申請する案件と10月以降の案件を分けます。
2. 10月以降の案件を3通りで試算する
政令案の区分を使い、1年・3年以上5年未満・5年以上の三通りで費用を置いておきます。最終額が変わっても、対象人数と時期さえ把握できていれば予算はすぐ組み替えられます。
3. オンライン申請の体制を点検する
所属機関としてのオンライン申請の利用申出、代理申請の権限、本人確認、添付書類の回収手順をこの機会に整えます。手数料差だけでなく、窓口へ出向く人件費の削減にもつながります。
4. 費用負担のルールを文書化し、本人に説明する
誰が何を負担するのかを契約書・規則レベルで確定し、対象となる従業員に事前に伝えます。
よくある質問
Q. 10月1日施行は決まったのですか?
A. まだ確定していません。2026年7月3日に公表された政令案の内容であり、意見公募を経て政令が公布された時点で確定します。法律上の施行期限は2027年3月31日までです。
Q. 9月中に申請すれば現行料金ですか?
A. 施行日前に受け付けられた申請には現行の手数料が適用されるのが通例です。ただし政令の経過措置の定め方によるため、最終的な政令の内容を確認する必要があります。
Q. 在留資格認定証明書(COE)の交付申請も値上がりしますか?
A. 今回の改正で上限が引き上げられたのは在留資格の変更許可・在留期間の更新許可・永住許可です。認定証明書交付申請は現在手数料が不要ですが、制度全体の見直しが進んでいるため、今後の公表資料を確認してください。
Q. 手数料は経費として処理できますか?
A. 会社が負担する場合の税務上の取扱いは、負担の性質や社内規程によって異なります。顧問税理士にご確認ください。
当事務所のサポート
つづき行政書士事務所では、外国人材を雇用する企業向けに、更新台帳の整理から申請時期の設計、オンライン申請体制の構築、費用負担ルールの文書化までご支援しています。申請取次行政書士として、従業員に入管へ出向いていただく必要のない形で手続きを進めることも可能です。岡崎市・豊田市・安城市をはじめ西三河全域、およびオンラインで全国に対応しています。
つづき行政書士事務所では、初回のご相談を無料でお受けしています。不許可時の無料再申請・返金規定を設けています。お電話(090-8501-7508・平日9:00〜18:00)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
本記事は2026年8月1日時点の公表資料に基づいています。手数料の最終的な金額および施行日は、政令の公布によって確定します。出入国在留管理庁の最新の公表資料をご確認のうえ、個別の案件については専門家にご相談ください。
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参考
- 出入国在留管理庁「令和8年入管法等改正について」(令和8年法律第32号)
- 出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法施行令等の一部を改正する政令案に係るガイドライン(案)に関する意見公募手続の実施について」(2026年7月3日)
- 外国人雇用新聞「在留手数料、10月改定案 ― 入管法公布後に企業が決めるべきこと」(2026年7月24日)



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